施設利用のために抗精神病薬??

認知症の方には、暴言、暴力、徘徊、異食、介護拒否など周辺症状といわれる症状が出る方がいます。

そこでデイサービスやショートステイを利用するときや施設入居の際に問題になってきます。

認知症関連の学会や勉強会でも話題になります。
「施設利用に際して抗精神病薬を使用するべきかどうか」

自分の考えとしては、「周辺症状により他の利用者さんやスタッフ、家族に危害が加わるおそれがある場合」は最低限の抗精神病薬の使用はやむを得ないと思っています。
しかし最低限です。
何でもかんでも抗精神病薬でおとなしくさせるという考え方は間違っています。

一人、ある患者さんがいました。
介護拒否が強く、大声を出したり暴言もひどいとのこと。
車いすの方です。
ご家族は仕事をされているので日中は施設を利用されているのですが、そこのスタッフから常に相談があり
「施設で大声を出す、介護拒否が強い、どうしたらいいのか」と、暗に抗精神病薬でおとなしくしてほしいと訴えている感じでした。
しかし、自宅での診察は確かにまれに拒否があるときはあるものの、ほぼ問題なく行えていました。
機嫌良く歌を歌ってくれるときもあります。
自宅でも手のつけられないほど暴れるということであれば薬の増量も検討しましたが、自宅では問題ないため定期薬は増量せず、頓服でどうしようもないときに使うという条件で、極少量の抗精神病薬を処方しました。

そしたらある日、その頓服薬を多めに飲まされたのか、ドロドロになって自宅に帰ってきました。
その方は薬剤過敏性もあり、そのことも施設の看護師さんやスタッフは把握しているはずなのですが…。
結局夜間に往診し、点滴を行いました。

あるときその施設を見に行ったことがあるのですが、その患者さんは一人壁に向けられて食事をとらされていました。
他の利用者さんはみんなで大きなテーブルを囲んでいるのにです。
スタッフの言い分は「大声を出すから、他の人と協調できないから」ということでしょうが、
これは明らかな虐待です。
しかもその患者さんは閉塞性動脈硬化症といって両足の血流がかなり悪いため、十分気をつけなければなりません。
それなのに車いす移動の時、足を足置きに乗せずに引きずって車いすを移動させていました。
ただでさえ危険な行為ですし、特にこの方は足に傷を作ってしまったらなかなか治りません。

そこの施設長さんと話したこともありますが、そこのスタッフは全員でないにしろ、最初からその患者さんに対して苦手意識を持ってしまっているように感じました。
そういう気持ちは患者さんに伝わってしまうこともわかっていると思うのですが…。

ちなみにここはかなり大手の介護グループです。
しかもケアマネさんの毎月の訪問もない。

ご家族がみかねて新しい施設を利用するようになりました。
今では問題なくその施設を利用され、しかも内服薬も減薬できるくらいになりました。

認知症の患者さんが不穏になる、機嫌が悪くなるには何か理由があることが多いです。
何も理由がないのに不穏になってしまうのであれば、薬を使わざるをえません。

とにかく何でもかんでも薬でコントロ-ル、施設の都合で薬でおさえるつける、ということはあり得ません!

しかし認知症のタイプによっては最初から少量の抗精神病薬を使用した方が良いケースもあります。
また自宅で不穏が強く、家族に多大な負担がかかっているときも最初から使用します。
特に前頭側頭葉変性症の患者さんでは、症状によっては最初から使用した方が良いケースが多いです。

抗精神病薬は微妙なさじ加減が必要です。
ADLを犠牲にせずに困った部分だけを取り除く。
なかなかぴったりとうまくいくことは難しいのですが、理想に近くなるようにその都度用量を調整していきます。

たとえ認知症だとしてもその人の人格を崩壊させてしまうような薬の処方は考え物です。
(もちろんまず第一に実際に介護をしている家族の負担を軽減することが先決ですが)
これは抗精神病薬に限らず、認知症薬の使い方にもいえることです。

しかし現在の認知症医療はそのあたりが大雑把にやられているというか、なおざりにされている気がします。
教科書どおりに薬を処方し、逆に不穏がひどくなったり、寝たきりになったり。
犯罪的と思うケースすらあります。
先生からの説明は「認知症が進行したからですね」で終わり。

本当にそうでしょうか?
処方を見直す価値はあります。

話が違う方向に行ってしまいましたが、薬ってすごいものでもあるし怖いものでもあります。
ちなみに薬剤過敏性が強い場合、リバスタッチパッチの一番小さいサイズ(4.5mg)を4分の1や8分の1にカットしたものでも患者さんの状態に変化がみられることがあります。
(本来リバスタッチは切ることは推奨されていませんが…)
けれどそれだけ慎重に調整しなければならないケースもあるということです。