実名報道

2016年、乳腺外科医が術後患者の胸を舐めたとして逮捕された事件がありました。
これに関する裁判のニュースが本日ありました。

乳腺外科医に再び無罪判決 手術後のわいせつ 差し戻し審で東京高裁

この事件、実は当初から医療者の掲示板でも結構注目されています。
毎回かなりの書き込みがありました。

地裁では無罪だったのに、高裁では逆転有罪判決(懲役2年の実刑判決)。
そして最高裁では高裁の判決を破棄。
そして今回、高裁で再び無罪となったのです。

当事者ではありませんから真実のほどはわかりませんが、上記ニュースにもあるとおり、科捜研はDNA資料を廃棄していたり(大事な証拠なのに)、記録も複数箇所で修正した跡があったりなど、科捜研の捜査があまりにも杜撰でした
それでも高裁において有罪にしたというのがびっくりでしたね。

これまでこの外科医を守ろうという運動がかなり大きくおこなわれており、下記のようなチラシまでも作成されていました。
https://www.min-iren.gr.jp/wp-content/uploads/2020/09/200925_03.pdf

それだけ慕われていたのだと思いますし、この外科医を知る多くの人も運動に参加されていたようです。

「真実のほどはわからない」と書きましたが、普通に考えて術後患者の胸を舐めようとは思わないでしょう。
サイコパスだったらあり得るかもしれませんが、それだったら精神鑑定に回されているはずです。

この外科医の唯一の落ち度は、一人で診察してしまったこと
今では男性医師が女性患者さんを診察するときは看護師さんも一緒についてもらうことを推奨されています。
なぜならこういうことがあるからです。

しかし術後の傷をちょっと確認に行くとか、ドレーン(術後の創部に入れる管。術後の滲出液を外に出す。あるいは術後出血があればすぐにわかる。)の量や質を確認に行くとか、そんなさっと確認しに行くときに看護師さんについてきてもらうのも悪い気がしてしまうのですよね。
ただでさえ人手不足の世界です。
看護師さんが忙しそうにしているとか、日勤から夜勤への交替の時だとか申し送りをしていたりするので、なかなか声をかけづらいこともあります。
熱心な外科医ほどこまめに術後の創部確認に行ったりします。
毎回毎回看護師さんを呼ぶのもねぇ、と思ってしまうでしょう。
しかも個室だったら怪しまれるかもしれませんが、今回は大部屋(4人部屋)での出来事です。
(ちなみに今回術後35分後の出来事であり、やはりせん妄説の可能性が高いようには感じます)

で、裁判の過程で気になるのが、ニュース記事にもあるとおり『高裁が有罪の根拠とした精神科医の証言は医学的に一般的なものではないと指摘し…』の部分です。
科捜研の杜撰さもあり、しかも医学的に一般的ではない証言を採用して有罪判決(しかも実刑)を出す。

しかも『起訴事実を否認している事を「反省、謝罪の態度を示していない」とされ、高裁で懲役2年の実刑を言い渡された。』そうなのです。
やっていないことをやっていないと訴えているだけなのに、それを「反省していない」と捉えられて判決がくだされるなんて、どうしろというのでしょうか?
有罪ありきの裁判だったのではないでしょうか?

こんな恐ろしいことはありません。
正義はどこにある?

こんなチャンチャラおかしい高裁判決で有罪の烙印を一度でも押されてしまえば、当然報道され周囲の知るところとなります。

で、とてもナイーブな内容ですのでこのことを書くかどうか迷ったのですが、ヤフコメにもあったので書きますが、この乳腺外科医の息子さん、高裁での逆転有罪が出た2ヶ月後にホームから電車に飛び込んで自殺してしまっているのです。
まだ12歳だったのに…。

被害者とされる方はバッシングを受けることもあったようで「セカンドレイプだ」と言って訴えていたこともあったようですが、もし「舐められた」ということがせん妄によるものだったとしたらこの事実にどう思うのでしょうか。

マスコミもマスコミです。
無罪か有罪かわからない段階で実名報道です。
しかも医師によるわいせつ事件ともなれば大きく取り上げますし、世間からも注目されます。
現場がどうなっていたのか、どういう状況なのか把握していないまま、ただ警察発表をニュースとして報道しさらし者にしたのです
安易な実名報道をしたマスコミも加害者です。
根本として名前を出した警察もどうかと思いますが。

逮捕に関しては、被害者とされる人から訴えられたら、事実を確認するため一度は身柄をおさえないといけませんから仕方ない部分もあるでしょう。
ですから逮捕の段階での安易な実名報道はどうなのかなと思ってしまうのです。
世間のイメージとしては「逮捕=犯罪者」ですから。
逮捕の段階ではあくまで「被疑者」であり、「犯罪者」確定ではありません。

実名報道に関するこの辺のルールいい加減ですよね。
たとえば医師がらみのニュースだと結構実名報道される傾向にあるように感じますが、一方警察官がらみの報道だと実名報道されにくいとか(もちろん報道されているのもありますけど)。

人を刺したとか、しかも周りに目撃者がいたとか、確実にその人が「犯人」ということが確定しているのであれば、逮捕の段階で実名報道でもいいと思うのです。
でも今回のように、本当にその事実があったのか判明していない段階での実名報道はおかしいと思います。
じゃなきゃ裁判の意味もなくなります。
有罪か無罪かまだ決まっていないのに、逮捕された段階で社会から裁かれることになってしまいます。

今やネットの時代ですから、名前が出ちゃった時点で一気に拡散し、しかも徹底的に調べられ、なぜか自宅まで割り出され嫌がらせを受けるのです。

安易に名前を出した方にも罪はないのでしょうか。

そして世間も逮捕だけで大騒ぎしないようにしたいものです
本当なのか?と常に疑う気持ちも大事でしょう。

逮捕された段階ではあくまで「被疑者」であり、その人が本当に犯罪を犯したと確定しているわけではありません。
裁判で有罪になっでから「犯罪者」となるのですから、逮捕の段階で犯罪者扱いはしてはいけません。

しかし一度逮捕されたり起訴されてしまうと、警察のプライドだとか検察のプライドだとかによって事実がねじ曲げられてしまうことがあります
これまでのえん罪事件を観ればよくわかるでしょう。
しかも今回の高裁のときの判決のような不可解な判決になることもあります。
ドラマのように正義感ある裁判官ばかりだったら救われるのですけどね。

ここであるドラマを紹介します。
Amazon Prime Videoで観れるのですが「フィクサー」というものです。
シーズン1からシーズン3まであり、唐沢寿明、内田有紀、斉藤由貴、西田敏行、小泉孝太郎、町田啓太などそうそうたるメンバーが出演しています。
シーズン2では鈴木保奈美も出てきます。

かなりおもしろかったのですがあまり話題になっていないのですよね…(自分が知らなかっただけかもしれませんが)。
これだけ有名人が出ているというのに。
内容が内容だからでしょうか。

「フィクサー」という題名からして内容はお察しください。
裏では実際にこういうことがあるんだろうな、という内容です。
たぶん国に忖度してあまり宣伝しなかったのかなとふと思いました。

ここでもえん罪で捕らわれるシーンがあります(シーズン2)。
完全にはめられ、しかも国家権力も関わっているとなったら本当絶望的になるでしょうね…。
でもこういうこと実際にあるんだろうなと思って観ていました。

しかし余談ですけどなぜ被疑者ってみんなあのグレーのトレーナーなんでしょう。
ニュース番組などで報道されるとき、警察署から出てきた被疑者ってみんなグレーのトレーナー着ていたりしますよね。
「グレー」という決まりがあるのでしょうか。
無難な色だからなのでしょうけど…。
自分なんか最近、グレーの色のトレーナーを着ることが多かったりするので、まさにいつも被疑者トレーナーを着ている気分です。

マスコミ報道なんて世論操作のために使われたり、浅はかな報道だったりするのですから、マスコミ報道に振り回されないようにしてください
マスコミの人はよく「間違ったことは伝えられない」と正義感ぶって言っていたりしますが、逮捕の段階で「犯罪者扱い」して報道しているのですから目も当てられません。
本当に犯罪者かどうかまだ確定していないにもかかわらず、「犯罪者確定」可のように報道し、世間を勘違いさせています。
きっとマスコミは、「世間が勘違いしているだけだ」と責任逃れするのでしょう。

乳腺外科医のケースでは大事な命が奪われました。
ひょっとしたら実名報道されていなかったら、失われずに済んだかもしれない命です。

2016年から9年の歳月が流れています。
乳腺外科医本人にとっても人生台無しです。
外科医として一番活躍できる年代を台無しにされました。

また検察が動くのかわかりませんし無罪確定ではないですが、証拠隠滅とも捉えかねないDNA資料の廃棄とかあったわけですし、もしまた裁判がおこなわれるとしたら今後も賢明な判決を期待したいものです。

亡くなってしまった息子さんのことを考えると、高裁の有罪判決は何だったのか…と憤りを隠せません。