100歳まで生きたいね~

「100歳まで生きたいね~」

これはとある患者さんの言葉です。

訪問診療は主に高齢者の患者さんにおこなっていますが、
「早く死にたい」
とか
「長く生きていたくない」
と言われることがままあります。

本気で言われたときにその返答に本当困ってしまいます…。

人生の大先輩でもあるし、自分が実際に80代、90代になったことがあるわけじゃないから、その歳になったときの心境を想像はできますがリアルに経験したわけでもありません。
説得力のあるような言葉が思いつきません。
何か気の利いたかっこいいことを言っても薄っぺらい言葉になってしまうと思うと、何も言えなくなってしまいます。

でも、今回の主役の94歳になる女性は珍しく
「100歳まで生きたいね~」
と、何回も言ってくれるのです。

この女性は約3年間くらいフォローしておりますが、なぜかここ最近になって急に
「100歳まで生きたいね~」
を連呼するようになったんですね。

すんごく笑顔が素敵な方で、いつもニコニコしています。
本当絵に描いたような笑顔なんです。

おうちはちょっと(いやかなり?)古い感じで、屋根に雪が積もると家がゆがんで、玄関の扉が開きにくくなるんですよね。
床も心なしか傾いている感じ。

そしてその方は風が苦手なのか、防犯上の理由からなのか、窓を開けることをかたくなに嫌がります
真夏でさえもです。
夏なんか本当サウナ状態です。
北海道の暑さも結構なものですからね。
それが密室ですよ。
で、本人は汗びっしょりかきながら、笑顔でニコニコなんです
「暑いね~」と言いながらニコニコなんです。
ついでに自分も汗びっしょりです。

明らかに熱中症リスクが高い環境なのですが、不思議とこれまで体調を崩したことがありません。
介護の方がいろいろ工夫してくれて、扇風機を増やしたり、お水もテーブルの上にちゃんと用意していてくれたりしてくれているおかげもあるかと思います。

そしていつも診察にうかがうと、いつも決まったソファに座っているのですが、大抵小銭を数えているのです。
8~9割の確立で小銭数えていますね。
10枚ずつ積み上げて。

いつだったか、外国のコインやドル紙幣が1枚テーブルの上にあったことあったんですね。
「なんで??」と思ったら、以前は外国に何回か行ったことがあるとのこと。
インドで象さんにも乗ったことがあるそうです。

とっても失礼なことなのですが、今の家の状態を見ると、まさか外国に行ったことがあるなんて…とびっくりしてしまいました。
しかも今90代の方が外国に行ったことがあるなんてとっても珍しいことです。
その方がどんな人生を歩んできたのかすごく興味があるのですが、軽度認知症があり同じことを繰り返し言うので、以前の詳しい話はなかなか聞けないでいます…。
ほんとう、いろんな人生がありますね。
(唯一の親族は遠方に住んでおり、この方は一人暮らしされています)

ちなみのこの患者さん、初診時は3種類もの血圧の薬を飲んでいました。
今や、血圧の薬は1種類に減って、しかも一番最小の用量です。
それでも血圧は120~140代。
この血圧の薬も中止できそうです。

で、ここからが本題なのですが(前置き長げ~)、「汗」と言えば気になるのが「シェディング」
しかも夏なんか汗びっしょりになっているのですから。

家族は遠方、本人は軽度認知症で判断能力がない、日常は介護の人がメインでフォローしているとなると、介護の人の判断でワクチン接種するかどうかが決められてしまうケースが多いです。
当然世間では高齢者はワクチン接種するのが当たり前、介護サービス利用するならワクチン接種するのが当たり前という風潮になっていますから、てっきりワクチン接種していたと思っていたんですね。

「本人は100歳まで生きたいと言っているのに、ワクチンの副作用でその希望叶えられないかもなぁ…」とか思っちゃったりしていたんですね。

で、あるときケアマネさんに聞いてみたんです。
「○○さん、ワクチンいつ受けましたか?」
って。

そうしたら
「えっ?受けていませんよ。」
との回答。

「先生に打たない方がいいと言われたから…」
との理由でした。

確かに言った記憶はあります。
でもさらっとね。
すんごくさらっとね。
だって熱く語っても、打たれるときは打たれてしまうし、介護メインの生活していれば十中八九打たれてしまう。
諦めの境地であまり語らず、さらっと言っただけでした。

でも、それを信じてやってくれていたなんて、メチャクチャ嬉しかったです。

確かに診察時、目立ったシェディング受けていなかったのです。
あれだけ汗バンバンかいていたのに、接種者特有のニオイもしないし、頭痛や歯痛も起きたことがなかったのです。
接種者でも全員から感じるわけでもないし、スパイクタンパクを外に出さないタイプなのか、良い注射に当たったのかなくらいしか思っていませんでした。

こりゃ確実に100歳までいきそうです。
そのとき自分は50代か…。

そのとき世界はどうなっているのか…なんて心配するのは時間のムダです。
今を楽しんで生きるべきです。

ちなみにこの患者さん、笑顔があまりにも素敵だからその笑顔を写真に撮って、2Lの用紙に印刷して簡単な額に入れてプレゼントしました。
もちろん涼しい日にね。
実は数年前に、全員ではないですが訪問診療の患者さんを写真に撮って印刷してプレゼントしたことがあります。
家族と同居の方は家族と一緒に。
なかなか家族写真って撮らないですからね。
介護でいっぱいいっぱいだったり、メインの介護者であるお子さんとかが働いていたりすると余計にみんなで写真を撮る機会なんてそうそうありません。

家族写真を撮ったあと亡くなられてしまった方もおりますが、ご家族に「あのとき撮ってくれて良かった」と言ってもらえたときは少しでもお役に立てて嬉しかったです。

「100歳まで生きたいね~」のおばあちゃん、いつもニコニコと言いましたが、おうちに入っていったときだけは「素の顔」なんです。
「誰がきたんだ?不審者か?」みたいな感じで見られるのです。
ちゃんと声かけて入っていくんですけどね。

その「素の顔」がまたたまらんのです。