農薬と神経疾患

診察しているといろいろな情報が入ってきます。
その中で気になったのが、北海道のある地域でALS(筋萎縮性側索硬化症)が多いというものです。
確かにその地域に住んでいる患者さんで、パーキンソン病や重症筋無力症など神経疾患難病が多い印象があります。

何か悪い工場があるのか?水が悪いのか?
いろいろ考えたのですが、その地域は農業が盛んで、どうも農薬が怪しいのではないかと思いました。

そこで調べてみると、農薬とパーキンソン病、その他神経疾患との関連の論文がたくさん出てきました。
アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、ADHD、自閉症などありとあらゆる神経疾患難病が農薬と関連があるといわれています。

パーキンソン病に関していうと、特定疾患医療受給者交付件数の推移を確認すると、1980年から2014年の間で17倍にも増えています。
その他、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症なども10~20倍近く増えています。
単なる高齢化が原因とは思えません。

一時期、ミツバチが消えたニュースが話題になったことがあります。
ストレス説などいろいろ考えられましたが、農薬が原因というのが濃厚です。
「サイエンス」や「ネイチャー」という一流科学雑誌にも2012年論文が掲載されています

一昔前は有機リン系(現在の日本でも使われています)、現在の主流はネオニコチノイド系といわれる農薬が使われています。
どちらもアセチルコリン系という、神経に関わる部位に悪さをします。
昆虫にもそれがあり、アセチルコリン系が狂うために、ミツバチは混乱して巣に帰って来れなくなったり(異常行動)、死んだりしてしまう(大量死)ようです。
それらをみた養蜂家の人は「まるで認知症になったかのようにウロウロしていた」と言っています。

人的被害も結構報告されています。
2008年長野県では、保育園の近隣でヘリコプターによる農薬の空中散布が行われました。
その直後、普段はきちんと行動できる子が落ち着きがなくなって大声を出したり、同じところを走り回ったりしました。
また10人いた園児のほとんどが腹痛や下痢を訴えました。

農薬による健康被害は確実にあると思われます。
EUや韓国ではネオニコチノイド系の規制が始まっています。
しかし農薬使用量世界第3位の日本は規制するどころか、逆に基準を緩め、どんどん使用するような動きになっています。

少し前にテレビでも報道されましたが、国内向けのイチゴは農薬のせいで台湾など外国に出荷できないのです
外国では受け付けてもらえないイチゴが、国内では堂々と出荷され、自分たちの体の中に入っているのです。
だから農家の人たちは、外国への出荷用に農薬の少ないイチゴを栽培しているとのことです
(それが可能であるならば、なぜ国内向けにはそのように栽培しないのでしょう…)

農薬散布の回数は、農協が決めるそうですが、ナスには66回、イチゴには65回、トマトは64回となっています。こんなに散布するということにびっくりです。
農協が散布回数を決めて、農協が農薬を売る。
農協だけの問題ではないと思いますが、「農薬ムラ」が存在するために、日本では規制が進まないのでしょう。

外国では、害虫駆除のためにネオニコチノイドを散布したところ、害虫の天敵までも殺してしまい、生態系が崩れ、逆に害虫の増加を引き起こしてしまった例もあります。
「一つの虫を殺そうと躍起になって殺虫剤をまくと、別の虫が大発生する」
これって、人間と感染症の戦いにも同じようなことがあります。
感染症を叩こうとして抗生物質を安易に使うと、その抗生物質に効かない耐性菌が出現し暴れ回ります。
ミクロの世界でもマクロの世界でも同じようなことが起こっているのですね。
ちなみに日本でもネオニコチノイド抵抗性の害虫が認められています。

ちなみに、ネオニコチノイド系農薬は、2000倍に希釈してもミツバチに影響があります。
それが無人ヘリコプターによって7~8倍希釈だけの濃い農薬が日本では散布されています(クロチアニジン)。

ネオニコチノイドの問題は数多くありますが、その一つに「浸透性農薬」というものがあります。
これは農薬が根や葉から吸収され、作物全体に広がる性質です。
つまり洗っても落ちないのです。
これはもうほとんどの人がかなりの量を体に入れてしまっていますね…。

また「複合毒性」という問題があります。
これはネオニコチノイドが他の農薬と一緒に使用されると毒性が高まるという問題です。
ネオニコチノイドと殺菌剤を混合して使用すると、毒性が240~1100倍になると論文で発表されています。
これは、食品における添加物の問題にも言えそうです。
それぞれ単品の毒性はあまりないとしても、複合で摂取したらどうなるかわかっていないのです。

次に問題なのが「土壌残留性」「水系汚染」です。
投与された農薬の半分以上が、1年以上土壌に残留していたという結果があります。
また2008年日本における調査で、河川水の78.8%、水道原水の32.7%からネオニコチノイド(イミダクロプリド)が検出されています。

「代謝毒性」という問題もあります。
人体に入り代謝されることで毒性が増すというものです。
以前問題になった中国餃子による食中毒ででてきたメタミドホスがその例です。

実はネオニコチノイドは日常生活に入り込んでいます
ガーデニング用の殺虫剤や除草剤、家庭用殺虫剤(コバエ、ゴキブリ、ムカデ)、ペット用のノミ取りなどにも使われています。
住宅建材(木材建材、断熱材、接着剤、塗料)などにもネオニコチノイド薬剤がしみこませられ使用されています。

こうなったら日本にいる限り逃れられない気がしてきます。

神経疾患予防のためにも、農薬のことを頭の片隅にいれて、少しでも避けていくことしかありません。