亜鉛による精神症状改善例

亜鉛によって精神症状が改善する例は多くあります。
前回に引き続き、その例をいくつか挙げたいと思います。

まずひとつは80代女性の例です。
この方は、病名としては明らかな認知症ではなく、どちらかといえば統合失調症様の方です。
ちなみにご兄弟には統合失調症の方がいました。
ちなみに、精神疾患を含め種々の病気は確かに発症のしやすさは遺伝する部分もあります。
しかし必ずしも病気が発症するというわけではありません。
環境や食生活などによって、後天的に遺伝子のオン・オフがコントロールされます。
これをエピジェネティクスといいます。

話がそれました。
この方は診察中はほとんど目を合わせることもなく、診察が終わるとそそくさと勝手に立ち上がって帰ってしまっていました。
こちらからの質問には答えるものの、自分からは決して体調について話すことはありませんでした。
この方に亜鉛補充を開始したところ、次の診察では明らかに様子が変わりました。
診察が終わってもちゃんと椅子に腰掛けているし、体調について気になるところを自分からしっかりと訴えるようになったのです。
そして、看護師さんに対してニコッと微笑みかけるようにもなりました。
明らかに社交性が改善された例です。

次は99歳の女性です。
施設に入居されており、夜中に不穏になることが多く、仕方なしに睡眠導入剤や少量の抗精神病薬を使用していました。
なんとかこれらの睡眠薬や抗精神病薬を減量・中止できないかと虎視眈々と狙っていました。
この方に亜鉛を補給したところ、睡眠薬を依存性のないものに変更することができ、精神病薬も少しだけですが減量できてきています。
それよりなによりびっくりしたのが、小説を読み始めるようになったのです(普通の文庫本の小説です)。
何がそうさせたのかは不明ですが、当時処方薬で目立った変更は亜鉛の補充だけです。
亜鉛は脳機能にも関係していますから、何か良い刺激となったのでしょう。
ちなみにカルテを見返すと、亜鉛補充を開始して1ヶ月後くらいには「明らかに覚醒状態がよくなった」と記載しており、
2ヶ月後くらいのカルテには「明らかに脳機能が回復してきている」と書いていました。
夜間の不穏は完全にゼロというわけではありませんが、以前に比べれば明らかに頻度も減ってきています。

次は80代の男性です。
うつ症状が強くあり、当初内科からもスタチン系のコレステロール薬や降圧薬などがありました。
一人になるのが不安で、その不安の強さが尋常でないほどで、ご家族の負担がかなり強い状況でした。
それこそ共倒れになりかねない状況でした。
まず内科系の薬を整理し、前胃で処方されていた抗不安薬や精神病薬も整理していきました。
抗不安薬の中には、逆に不安を増強させてしまうものもあります。
この方は診断がとても難しく、ピック病のような症状もありました。
しかし典型的なピックという感じでもなく、かなり処方も迷いました。
種々の精神病薬を試してみるもどれも効果はいまいちで、あるときの採血で著明な亜鉛欠乏・銅過剰が判明しました。
亜鉛補充を開始して1ヶ月近くになっても明らかな改善傾向は見えず、仕方なしにエビリファイという抗精神病薬を少量で使用しました。
そうしたところ、突然元気にやる気が復活し、自分から外出しようと言うまでになりました。
ご家族で久しぶりに外食されたようです。
いきなり長時間外出してしまい疲れたのか、また精神症状が安定しなくなってしまいました。
エビリファイの量を調整し、現在は以前ご家族を悩ませていた症状もほとんどなく過ごせています。
今は逆にエビリファイが効きすぎてしまっているようで、現在極少量に減量しているところです。

自分としてはなるべく抗精神病薬で眠気を強く出してしまったりすることは避けたいと考えています。
なぜなら寝たきりの原因にもなってしまいますし、それに伴い筋力が低下していってしまいます。
眠気や神経伝達物質のアンバランスなどによって脳機能も落ちてきてしまいます。
しかし今回のケースでは、御家族と十分話し合い、とにかく御家族の負担軽減を優先して一時的にということで抗精神病薬を使用しました。
実は、すでに家族の方が限界を超えている状況で、精神科入院も検討したいとおっしゃっていたところでした。
間一髪で入院をまぬがれました。

この方は亜鉛が効いたのかははっきりしません。
亜鉛補充をして1ヶ月目と、エビリファイの処方が重なってしまったからです。
しかし現在エビリファイが極少量でも落ち着いているということは、亜鉛も多少なりとも効果あったのでないかと思います。
いずれエビリファイも中止してみたいと思っているので、そのときにまたはっきりするでしょう。

ちなみにこの方、コレステロールの薬をやめてもまったく血液検査は問題ないですし、
現在は血圧の薬もやめていますが、血圧も問題ありません。
スタチン系の薬は、ホルモンの原料はなくなるわ、細胞の原料はなくなるわ、エネルギーの元になるCoQ10は欠乏させるわでうつ病や認知症のリスクになります。
目立った副作用が目に見えて出てくることはまれですが、確実に細胞の代謝は落ちており、見えないところで確実に体をむしばんでいます。
過度な降圧も、脳血流が低下するためにうつ症状や認知症の症状を発生させる原因になります。
不必要な薬は決して飲むべきではありません。

 

うつ病や統合失調症、自閉症、ADHDにいたるまで、亜鉛と銅のバランスが関係しているケースが多々あります。
もちろん亜鉛と銅の問題だけではありませんが。

例えばうつ病ひとつとっても、うつ病というのは原因がひとつではありませんし、
治療法もひとつではありません
何でもかんでもSSRIという薬で治るわけではありません。
どのタイプのうつ病かを見極めて、それにあった治療を行う必要があります。

SSRIが合わないうつ病というのは確実にあります。
そのような人がSSRIを飲み続けることによって狂暴性が増したり(アメリカの銃乱射事件や、日本でのハイジャック事件など)、
自殺してしまったりするのです。
患者さんは真面目な人が多いですから、良くならないなぁと思いながらも、処方された薬を飲み続けてしまうんですね。
これは医者が気づくべきであり、効いていないと思ったら薬を増量するのではなく中止するべきなのです。
もちろん患者さん自身からも訴えることができれば良いのですが、医者に訴える元気や気力すらなくなっている場合が多いのです。
なぜ効いてもいない薬を何年も出し続けるのか理解に苦しみます。
抗うつ薬は一度長く飲み始めてしまうと減量・中止するのに時間がかかります。
本当に間違って出されたSSRIほどやっかいなものはありません

話がまた脱線してしまいました。

結論は、精神疾患でさえも
薬だけが治療ではない、栄養でも改善できる例はあるということです。