認知症は不幸か

ちまたではいろいろな認知症予防法が紹介されています。
みなさん、認知症にはなりたくないと思っているあらわれでしょう。
もちろん認知症にならないにこしたことはありません。

認知症患者さんをたくさん診察するようになって、ふと思いました。
「認知症患者さんは今を生きているんだ」と。

現代の人たちは、過去のことを悔やんだり、忘れていたこともわざわざ思い出して
後悔したりしています。
あるいは、不確かで起きるかどうかわからない未来のことを心配ばかりしています。
今の人たちに欠けていることは「今を生きること」ではないでしょうか?

今この瞬間を全力で生きる。
今を思いっきり楽しむ。
今に集中する。
現代人に欠けているのは「今」です。

もちろん今の楽しみだけを考えてお金を無駄遣いしちゃうとかはダメですが、
わからない将来のことを思い悩んだり、戻ることのできない過去のことを悔やみ続けたりしているウエイトが大きすぎるのではないかと思います。

認知症患者さんは、現代人にとってはお手本の生き方なのかもしれません。
忘れていた大事なことを気付かせてくれているのかもしれません。

もちろん認知症患者さんによっては昔のつらいことをずっと引きずっている方もいます。
トラウマのようにずっと昔に受けたつらいことを言い続けている方もいます。

人間は、つらいこと、ストレスが続くと記憶の中枢である海馬が萎縮します。
つまり人間の自然に備わった防衛反応として、つらいことを忘れようと海馬が萎縮してくるのかもしれません。
海馬が萎縮しないで、つらいことをずっと覚えていたら、その他の臓器に影響が出てしまう可能性があります。
「病は気から」というように、ストレスから癌が引き起こされたりして寿命が縮まってしまうかもしれません。
人間の個体・生命を守る手段として、海馬が犠牲になっているのかもしれません。
生命として、一番長生きできる方法を選んでいるのかもしれません。

もちろんリコード法にもあるように、認知症の原因はストレスだけでなくたくさんあります。
重金属の問題であったり、栄養の問題であったり、代謝障害であったり…。
しかし、本人や周囲の人が物忘れに始めて気付いたときというのは、何らかの大きなストレスがあったことが多いのではないでしょうか?

正直なところ、認知症は進行してしまうと改善はかなり難しくなります。
栄養でサポートしたり、解毒をしたりすることによって進行はかなり遅らせることはできます。
治療が早ければ早いほど改善は期待できます。

ただかなり進行してしまったとしても、諦めているわけではありません。
たまにでも、家族とコミュニケーションがとれる、家族のことがわかるということがあれば、介護疲れも吹っ飛びます。
少しでも良いところを引きだそう、取り戻そうと考えて治療しています。

最初の話からだんだん話が変わってきてしまいました。

認知症患者さんを目の前にすると、「かわいそう」とか「あんな風にはなりたくない」とか思うかもしれません。
しかし認知症患者さんは、忘れかけていた生き方を思い出させてくれているのかもしれません。
そう考えると、少し見方が変わりませんか?

本人にとったら不幸ではなく、究極の生き方をしているのかもしれません。
つらいことをすべて忘れ、将来の余計な不安も抱かず、今だけを生きるようにした。

認知症患者さんは家族やスタッフのサポートがないと生きていけません。
だけど学ばさせてもらうところもあるのです。