とある生活保護の方の言葉…

先日、50代の男性患者さんの診察にうかがいました。
この方との付き合いは長く、4年以上になります。

お酒で失敗し、外傷により右上下肢不全麻痺があります。

これまでの印象は、言葉は悪いかもしれませんが、「わがまま」。

当初、施設に入居されていたのですが、いろいろスタッフに言われるのがうるさいらしく、一人暮らしを始めたくらいです。
利き腕がうまく使えず、一人暮らしはとても大変なのに…。

お正月に転倒して大きな傷を負ったことがありました。
ケアマネさんから連絡があり、出血が止まらないとのことですぐに診察に行きました。
右耳から出血し、耳が大きく腫れています。
出血もだらだら続いていますし、右耳の腫れ方が尋常ではありません。
すぐに病院受診しなければと促したのですが、本人はかたくなに拒否です。
「絶対に病院に行かない」と。
「自分で治す」と言って聞かないのです。
この方は意志がはっきりしていますので、とりあえず圧迫止血し
出血が止まってきたと思ったところで退散しました。
その後定期的に診察してきましたが、右耳の腫れはなかなか引かず、色も悪い感じがします。
最悪の場合、右耳が腐る可能性があると脅しても、まったく効果ありません…。
再三繰り返し病院受診を勧めましたが、絶対に行くとは言いません…。
そんなこんなで気付いたら1年近くがたち、右耳の腫れはおさまり、ほとんどきれいになっていました。
本当に自分で治してしまいました。

そのような方なのですが、先日の診察時に突然、
「みんなに助けられてありがたい。なんかうれしい。」
と言われました。

とてもびっくりしました。
このようなことを言う方だとは微塵も思っていませんでした。
心からとても感動しました。

本人は、
「こんなこと恥ずかしくてなかなか言えないけど、本当に感謝している。」
と。

恥ずかしい気持ちを乗り越えて感謝の言葉を面と向かって言ってくれた勇気にすごくびっくりしました。
この4年半、そのようなことは一切なかったですから。
どちらかいえばわがまま放題だったので…。

当たり前のことにありがとうと言える勇気はすごいと思います。
当たり前のことが当たり前ではないことに気づけることはすごいことだと思います。

患者さんから学ぶことはたくさんあります。
それは医療的なことだけでなく人生についても。

患者さんたちに心から感謝です。