亜鉛と難聴

年齢とともに耳が遠くなってくる事があるかと思います。

これは、老人性難聴とか加齢性難聴と言われています。
耳の奥にある蝸牛の有毛細胞に異常をきたすために起こると言われています。

あるいは耳垢塞栓といって、耳垢がガチガチに固まってフタをしてしまっていることもあります。

 

患者さんで、血液検査で亜鉛が不足している人に亜鉛を補給していたところ
あることに気づきました。

耳の遠かった方が、明らかに耳が良くなっているのです。

たまたまかなぁと思っていたのですが、何人もそのように改善する方を経験するようになったので、
これは確実に亜鉛が関係しているかも」と思いました。

本来なら聴覚検査で測定すればはっきりするのですが、なにぶん訪問診療の患者さんで通院が難しく安易に検査ができなかったり、認知症だったりで正確に測定することが困難です。
でも診察時の会話で全然違うことに気づきます。

亜鉛研究の第一人者である、篠ノ井総合病院の小野靜一先生は、亜鉛によって嗅覚が改善されることを論文などで発表されています。
小野先生に直接お伺いしたところ、小野先生も亜鉛によって聴覚が改善した例を経験しており、講演などで発表されていました。

難聴になると認知症リスクが上がると言われています。
これは以前から自分もそうかなぁとは思っており、単純に外界からの刺激がなくなることで認知症になりやすくなるのかと思っていました。
あるいは聞こえたふりして適当に返事したり、とんちんかんな答えをするから、まわりから認知症のようにみえたり。
実は亜鉛はもともと記憶の中枢と言われている海馬や大脳皮質に高濃度に含まれています

確かに「難聴になると認知症になる」という流れもあるかもしれませんが、
根本に亜鉛欠乏があって、それが難聴と認知症の両方を引き起こしているとも言えるのかもしれません。

また認知症は嗅覚の異常から始まるともいわれています。
これも、根本に亜鉛欠乏があって嗅覚異常、認知症の両方を引き起こしているのかもしれません。

亜鉛欠乏によって感覚機能が落ちる。そうすると外界からの刺激がなくなって認知症になりやすくなる。
亜鉛欠乏によって海馬や大脳皮質の神経細胞の減少をきたす。
多分両方の機序によって認知症は進行していくのかもしれません。

亜鉛欠乏は味覚障害が有名ですが、嗅覚や聴覚にも関わっています。
脳機能にも。

亜鉛欠乏によって嗅覚における神経細胞が壊れることは、これまで報告されています。
聴覚にも同じような事が言えるのかもしれません。

そして亜鉛は生体内の何百種類といわれる代謝にも関わっています。

耳が遠くならないためにも、認知症予防にも、体全体のために亜鉛補充をしておくと良いかもしれません。

今ではあらゆる食品に含まれている食品添加物のリン酸塩は、取り過ぎるとミネラル不足に陥ります。特に亜鉛欠乏につながります。
リン酸塩はハムやソーセージ、ベーコンに多く含まれていたりします。
そしてリン酸塩は、「PH調製剤」と書かれていたりもします。

現代のいろんな食品に含まれてしまっているためなのか、血液検査をすると驚くほど
亜鉛欠乏の方が多いことに気づきます。

じゃあ、亜鉛はどれだけ補充した方がいいのか。
亜鉛は一応基準値というものはもうけられていますが、これは参考程度でみていけば良いと思います。
大切なのは、亜鉛と銅のバランスです。

亜鉛と銅の値はシーソーのような感じになっていて、
亜鉛が少ないと銅が過剰になり、亜鉛が増えてくると銅は減ってきます。

理想なのは亜鉛と銅が同じくらいの数字になることです。

亜鉛を1日何mgとればいいのかは一概には言えません。
同じような亜鉛値で同じ量の亜鉛補充をしても、増え方は人それぞれです。
それは腸管の吸収のされ方であったり、普段加工食品をどれだけとっているかにもよるでしょう。
あるいはストレスなどでも亜鉛はすごく消費してしまいます

なので、定期的に採血をして亜鉛と銅のバランスを見ていくことが良いでしょう。
亜鉛を大量に補充していったら、銅が異常に低くなってしまったというケースもあるからです。
あるいは、亜鉛をしっかり飲んでいたつもりなのに思ったほど回復していないということもあります。

多分、リン酸塩を含めた食品添加物の摂取を大幅に減らすことができれば、亜鉛欠乏にも陥りにくいのかもしれません。
わざわざ亜鉛補給をしなくても済むのかもしれません。

しかし現代の日本の食事では、添加物から逃れられることはできません。
日本で認められている食品添加物の種類は、他国と比べても多いくらいですから…。

亜鉛は牡蛎に多く含まれています。
しかししょっちゅう食べるものでもありませんし、生だと食中毒のリスクも高まります。
そして今では海洋汚染も気になります。

何かが欠乏しているとなったら、単純に補充をすることを思い浮かべるでしょう。
食品からとるのが一番の理想なので、牡蛎を食べるかなとか。
しかしそのようなプラスしていくことだけがすべてではないのかもしれません。
食品添加物を多く含む食品を制限することによって、亜鉛はある程度自然と回復するかもしれません。
しかし先にも書いたとおり、なかなか添加物から逃れることはできません。

結局亜鉛サプリで補充するしかないのかもしれません。
もちろん今では処方薬でも補充することはできます。

ただしっかりと補充できる処方薬はかなり高価な薬です。
薬価が高すぎます。
1割負担の人で計算しても、同じ用量の亜鉛で比べてもサプリの方が断然安いことがわかりました。
なので、自分は患者さんと話し合って、なるべく安く済むように提案をしています。

ちなみに市販のサプリで気をつけてほしいのは、銅を含む亜鉛サプリです。
亜鉛と銅のバランスが異常に悪いのに、銅も微量とはいえ一緒に補充してしまっていたらなかなか亜鉛と銅のバランスは良くなりません。

ぜひ認知症予防のためにも亜鉛補充を検討してみてください。
風邪も引きにくくなりますよ。
(外国では、亜鉛=免疫力 というイメージだそうです。)

もちろんすべての方が亜鉛補給で聴覚が改善するとは言えません。
しかし試してみる価値は十分あります。