最期まで生ききる

先日、担当患者さんで、104歳の方と92歳の方が亡くなられました。

104歳の方は、心不全や腎不全が進行してきていた状態でした。
亡くなるその日の朝、自分で朝食を食べ、デイサービスに出かけます。
デイサービスではシャワー浴も行ったそうです。
そして夕方、自宅まで送ってもらってきて体を支えられながら居間に入ってしばらくした後、自然に呼吸が止まったそうです。

きっとデイサービスでも苦しかったのかもしれません。
でも自宅まで頑張ったのでしょう。
自宅で最期を迎えるんだと。

主な介護者は息子さんでした。
104歳のお母さんですから、息子さんも80代です。
80代には見えないほど若くお元気にされていますが、それでも介護はかなり大変だったと思います。
周囲からは施設に入れた方がいいと何度も言われていたようです。
しかしお母さん(患者さん)は目が不自由であり、いきなり施設に入ったら目が見えないし不安になるとの思いから、自宅で頑張ることにしたそうです。
認知症があれば施設に入れることも検討したけど、頭もしっかりしているし、それでいきなり自分では見えない環境に放り込まれるのは不安が強いだろうと。
息子さんの強い愛が感じられますね。

これまでむくみが強くなったり、呼吸がゼーゼーしたり心不全症状の増悪を繰り返してきました。
その都度こまめに薬を調整し、自分がフォローしている間はなんとか入院することもなく経過を見ることができました。

104歳で大往生とも言えますし、薬の微調整をこまめにやって入院させずにうまくやってこれたという部分もありますが、やはり自分は反省してしまいます。
もっとうまい薬の使い方はなかったのかとか、この薬を使っていたらどうだったかとか。

ご家族にしてもこれまで、「年齢が年齢だから」といつ何が起きてもおかしくはないと心構えてはいたようですが、やはり実際に目の当たりにすると動揺してしまい、なんとか生き返ってほしいと思うものです。
それは当然のことです。
ましてや自分の肉親ともなれば、何歳になっても生きていてほしいと思うものです。

今回ALS患者さんへの嘱託殺人で医師2名が逮捕されました。
この人たち、「扱いに困った高齢者を『枯らす』技術」とかいう電子書籍を発刊していました。
高齢者、老人たちを邪魔者扱いしている感じです。
安楽死についてはいろんな議論がありますが、今回の医師は主治医でもないのに行った、その日はじめて直接会っただけだそうですから言語道断です。
明らかな殺人として異論はないでしょう。
こういう人たちって、人が死んでもなんの感情もわかないのかなぁと思ってしまいます。

確かに無駄な延命で、点滴をバンバン入れていたりすれば、患者さんは逆に苦しみます。
確かに最期の最期で枯れるように亡くなると、それほど苦しまずに亡くなることができます。
しかしこの人たちがやっていること・考えは、「扱いに困った高齢者」を本来の死期よりも早めて強引に殺すということです。
これは容認できることではありません。

きっとこの人たちにしたら、104歳なんて発狂しちゃうくらい到底受け入れられないんだろうなと思います。

自分は可能性を捨てない主義です。最後まであきらめません。
少しでも可能性があるのならそれにかけたい思いが強いです。
たとえ高齢であろうと、世界長寿を目指すくらい頑張りたいと考えています。
あるいは重度認知症であろうと、何かをきっかけに良い方向に行く可能性だってあります。
可能性はゼロではありません。

話を元に戻します。

次に92歳の方です。
この方も認知症はほとんどなく、毎日パソコン画面をみて株のデイトレードをしていました。
92歳でですよ!
パソコン画面もお部屋に何台か並べて。
もちろん新聞は日経新聞。
食事も自分が好きなものしか食べず、嫌なものは一切食べない主義でした。
自分の好きなことをして本当に自由に過ごされていました。
笑顔がとても素敵な男性の方でした。
施設に入居されていましたが、ある日入浴中に突然亡くなったとの連絡がありました。
目立った外傷もなく事件性はもちろんありません。
表情はとても穏やかで、苦しんだ様子は一切ありませんでした。
心臓系か何かによる突然死だったのでしょう。

この方も直前までは普通に過ごされていました。
苦しんだ様子がなかっただけでも救われた思いがあります。

身よりはお孫さんしかおらず、最近結婚されたとのこと。
唯一の身寄りであるお孫さんが落ち着いたところで、安心したのでしょうか。

実は、この方の件では不思議なことがありました。
この方が亡くなったと思われる時間、離れて住んでいるお孫さんに急に頭痛が起きたそうなのです。
めったに頭痛など起こさないのに、その日、その時間だけに強い頭痛。

こういう話は結構ありますね。

お二人とも、この世での肉体という乗り物をを捨てて魂だけの存在になりあの世へ旅立たれました。
ずっとご家族のことを見守ってくれることと思います。

肉体を脱ぎ捨てた瞬間に、この世での体の不調・苦しみは一切なくなります。
104歳の方はきっと世界がはっきり見えるようになり、心不全の苦しみも一切なくなったはずです。

ちなみにあの世にデイトレードってあるのかなぁ。
92歳の方はデイトレード命っていう生活を送っていたから、ちょっとそこが心配です。