認知症の方の共感力

今日少し驚くことがありました。

主人公は若年性アルツハイマーと診断されている60代の男性の方です。
体の動きはとても良いのですが、前頭側頭葉の萎縮が進行しているのか、言葉のやりとりができず落ち着きがない、時々手が出てしまうなどの症状があります。

当クリニックの担当になってまだ1ヶ月半くらいしかたっていません。
今目立っている症状から、前頭側頭葉変性症に効果のある薬を使用しているのですが、「奇異反応」といって逆に症状が悪化してしまったり、かと思えば今度は逆に薬が効きすぎて動きが悪くなってしまったり、正直薬の選択に難渋しています。
薬の量は決して多くないのですが、薬にとても過敏なところがあり、正直薬のコントロールがとても難しい部類の方です。

症状からは「重度認知症」とされる方です。

診察時は、お客さんが来たと認識するのか、にこやかにソファに座ってくれています。
ふだんはこんなにじっとしていられないのにです。
座ってもらっている間、ご家族と薬の説明など結構時間をかけて説明していました。

すると突然、患者さんが立ち上がり、床に座っている看護師さんの真後ろに行き、
両肩をマッサージするように優しくつかみました。
その後、後頭部を本当に優しくポンポンとして、「大丈夫」と言ったのです。

実はこの日、看護師さんは肩と首のコリがかなりひどく、テンションが少し落ちていました。
もちろん患者さんやご家族など誰にも言っていません。

たまたまなのかもしれませんが、たまたまにしてもこんな風にされたことはこれまで一回もないですし、ましてや病んでいる首のところをピンポイントで当ててくるなんて偶然にしてはできすぎていますし、奇跡に近いと思います。
そして「大丈夫」と声をかけるなんて。

言葉を必要とせずとも、まるで看護婦さんの気持ちを読み取る能力があったかのようです。

認知症になって失う能力もあったけど、その分違う能力が研ぎ澄まされたのかもしれません。
まさにそう思える出来事でした。

まさかと思う人が多いかとは思いますが、人の脳みそはまだまだわからないことだらけです。
科学的でないとか、一笑に付すことは簡単です。
ましてや認知症ですから、実験・検査をして客観的に調べることも難しいです。

しかし
科学的でないこと=存在しないこと
という考え方は科学者のおごりです。

ちなみに、この患者さんは、奥さんが調子悪いときもちゃんとわかって、
そんなときは優しく肩に手をかけたりしてくれるそうです。

普通の人以上に共感力を高めているのかもしれません。
その人の様子でわかってしまうのでしょう。

となると、愛のない介護をしている人、要注意です。
認知症だからといって馬鹿にしている人も少なからずいます。
そういう気持ちも読み取られているかもしれませんよ?
ささいな表情も見逃さないのではと思っています。
あるいはそういう気持ちが介護を困難にさせている可能性だってあります。

今はマスクマスクで、表情がなかなかわかりづらいですし、こちらの表情も伝えにくいです。
目元だけでやりとりしなければなりません。
なかなかコミュニケーションが難しくなりますね。
在宅医療にしろ、介護の世界では「表情」も重要と考えられます。
相手だけでなく、「自分の表情」です。
それを今では「目」だけでしか表現できません。
自分はなんとか眉毛の動きも使って表現しようと試みていますが…。
(半分冗談で半分本気です)

今回の患者さんの出来事、「たまたま」という話で終わりにすることもできます。
でも、「人の心がわかるんだ。共感力が研ぎ澄まされているんだ。」と考えると、
みんな幸せな気持ちになれると思うのです。
それこそそこに愛が生まれます。

考え方によってゼロの出来事にもできるし、プラスの出来事にもできます。

だったらプラスの出来事として受け取った方が良いですよね。

頭がっちがちの科学者からしたら、「都合よく考えすぎ」と思われるのかもしれませんが、でも誰も損しませんよね

プラスの出来事に捉えられれば、介護・医療にもより強い愛が生まれます。
そうすれば患者さんにもプラスになるはずです。
そうやって良い循環ができると思うのです。

生きているといろんな出来事がありますが、プラスに受け止めるクセをつけると、
本当に人生が楽になるし、幸せになると思います。