昨今、栄養療法がちょっとしたブームになっています。
栄養療法と言ったり、オーソモレキュラーと言ったりします。
確かに薬に頼らず食事・栄養重視の考え方は絶対に間違いではないですし、自分もその考え方で診療をおこなっています。
しかしブームというのは新たなビジネスを呼び起こします。
資本主義で成り立っている現代社会では仕方のないことですが、あからさまにビジネス丸出しでやっているのをみるとなんだかスッキリしない気持ちになります。
医療-健康-ビジネスって、両立させていいものか疑問に思ってしまうのです。
だって、お金がない人は本と本当の健康を求めることができないのかって話になってしまいますし。
まぁ悪い食事を避ければ、なにも高価なサプリメントを買わなくても健康を維持できる可能性は高いのですが、いまやどんな食事、どんな栄養をとった方がいいのかの知識を得るのにも、高価なセミナー代がかかってしまったりします。
知識を得るためにお金がないといけないような雰囲気になっています。
もちろん講師をされる先生は、その知識を得るために努力をし、教える時間を割いているわけですからそれなりの対価が必要になるのは当然でしょう。
自分はこれまでクスリに疑問を持ってから、「やっぱり人の体って食べ物からできているんだから栄養が大事じゃん」って当たり前のことに気づき、多くの栄養療法の講習などを受けて勉強してきました。
そして気づいたことがあります。
「あぁ、これもビジネスになっている」って。
最初の頃は医療従事者向けに講習をおこなったり、資格を与えていたりしていたんですね。
それがだんだんと一般の人向けに講習をおこなうようになりました。
これはこれでよいことだと思います。
栄養のことは一般の人もちゃんと学ぶ機会があるのは良いことです。
しかし最近では、資格制度をもうけているところがかなり増えてきました。
「資格」といってもあくまで民間資格ですし、栄養療法に関する資格は「世間的に認知されていないもの」ですから正直言ってあまり意味がない。
資格を取るための講座は年間十万前後だったりします。
そして継続的な収入にするために、毎年更新料を払わせられたり、年会費を徴収されたり。
とある栄養療法団体(A社)のホームページには、「オーソモレキュラー栄養療法 導入医療機関一覧」というものが紹介されています。
ここに掲載されるための条件って、実は
「患者さんにどれだけ(その会社の)サプリメントを売ったか」
で決まるんです。
そんなバカな話ってありますか??
ふつう
「そこの医療従事者がどれだけ勉強したか」
で決まるものだと思うのです。
札幌にもいくつかA社で紹介されている医療機関があるのですが、そこに受診して採血を行い、その後
「あれやこれやで、合計月10万近くのサプリメントを勧められた」
と言って、困って相談にみえる患者さんがこれまで何人かいました。
毎月10万のサプリメントって、普通続けられないですよね。
A社がどことは書きませんが、「栄養療法」とか「オーソモレキュラー」で検索すると決まって上位に出てくるところです。
どこのブラウザで検索しても上位に出てくるので、SEO対策(Search Engine Optimization)をしているんでしょうね。
SEO対策とは、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが検索結果で自社サイトを多く露出をするために行う対策のことを言います。
その企業がお金を払って、検索したら最初に出てくるようにする方法です。
うちも開業した当初、いろんな企業から「SEO対策しませんか」って営業の声がかかってきました。
例えば、うちがSEO対策をしたとして、「札幌 訪問診療」と検索したら、最初の方に出るようにする対策のことをいいます。
ちなみにいまYahoo!で「札幌 訪問診療」と検索したら、11ページ目にようやく出てきました…。
Yahoo!とかgoogleってあからさまなSEO対策はできないようにしたとか言われていますが、今でももろにおこなわれています。
そして検閲もおこなわれています。
例えば今の時期で言えば、ワクチン接種について不都合な情報・HPは上位に表示されないようにしたりしています。
あまり有名ではないのですが、
「DuckDuckGo」
という検索サイトがあります。
これはいまのところ公平に表示されるようなシステムになっています。
同じ言葉でYahoo!とDuckDuckGo、両方で検索してみてください。
表示されるものが全然違います。
ちなみにDuckDuckGoで「札幌 訪問診療」で検索したら、何故かわかりませんがうちはかろうじて1ページ目に出てきました。
えっ…てことは逆に言うとYahoo!やgoogleではうちのホームページも検閲されているってこと???
って気づいちゃったのですが…。
おぉコワっ。ガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル
多分DuckDuckGoもSEOの影響はあると思いますが、検閲のようなものはないのだと思います。
で、話が脱線してしまったので、栄養療法ビジネスの話に戻ります。
最近、テレビに出演したり、多くの本を出版されている某有名医師がそのビジネスに乗り出しました。
SNSで広告がバンバン出てくるのです。
最初だけ無料で動画が見れるというのでみてみたのですが、栄養療法を主体にした講義を行い「○○コンサルタント」というものを育成するためのプログラムのようでした。
もちろん新たに作る民間資格ですから、世間では認知されたものではありません。
しかも「年収3000万も目指せる!」とか「海外でも活躍できる!」「成功!」「キャリアアップ!」「ハイステータスな○○コンサルタント!」「初心者でもできる!」とか魅力的な言葉がならびます。
年収3000万って…。
あからさますぎて言葉も出ません。
というか下品すぎます。
こんな言葉で消費者を釣って会員集めするなんて、なんだか幻滅しちゃいました。
どうもその先生、ヘルスケアビジネスをおこなっている企業と提携して始めた事業のようです。
業務提携締結の発表では、「デジタルプロモーション(SNSとかでってことですね)により3万人規模の○○コンサルタントの輩出を目指します」と発表されていました。
栄養療法のたちが悪いことは、間違ったことをしてもすぐに問題が出ないことなんです。
間違ったビタミン、ミネラルの補給、量の間違い、食事指導の間違いをしても、すぐに悪いことが起きないので、いい加減なことをやっていてもバレないんですね。
問題にならないことが多い。
でもやっぱり過剰に補給すれば問題が起きることも多々あります。
例えば亜鉛が大事だからといって大量に長期間飲んでいると、今度は銅が欠乏してきて貧血になってしまうとか。
やはり定期的な採血で確認するというのは大事だと思います。
一般の方が講義を受けて勉強をするというのはとてもよいことだと思います。
しかしそれで資格を与え、それを用いた無責任なビジネスを推奨するのはどうかと思います。
上記の○○コンサルタントの方は食事指導がメインのようですからその問題は少ないと思いますが、
A社の方の資格は、一般の人もサプリメント販売ができるようになるシステム(もちろんA社からサプリを仕入れて)のようですからちょっと危険ですね。
いつか別にブログで書きたいと思いますが、栄養療法では「オメガ3が体によい」と教えられますが、
だからといってオメガ3をバンバンとっていると痛い目に合います。
オメガ3は確かによい面もありますが、悪いことも結構あるのです。
いま言われている栄養療法がすべて正しいわけではありません。
栄養の勉強をおこなうことは大切ですが、ビジネスの食い物にならないように気をつけてください。