ヘリコプター

まず最初に。
前回、「ペイハラ」なる題名のブログを書いたところですが、翌日朝にこんなニュースがありました。

「自称・広末涼子容疑者が逮捕」…「ZIP!」「THE TIME,」「グッド!モーニング」「めざましテレビ」民放各局が速報…傷害の疑いで現行犯逮捕

自称・広末涼子って…。
プライベートの広末涼子はよっぽど広末涼子っぽくなかったのでしょうか。
どうでもいいですけど。

広末涼子さん逮捕、医療現場のカスハラに注がれる厳しい目「いかなる場合も許されない」離職の原因にも

話していたことや話題にしていたことが、現実に起きたり他のところでも話題になったり、そんな事象がここ最近たびたびあります。
たまたまかもしれませんが、結構頻繁にあります。
日々「良いこと」を話題にしたいものです。

さて今回のテーマは「ヘリコプター」です。
先日福岡県の病院所属の医療用ヘリが海に墜落し、医師と搬送されていた患者さん、付き添いの家族が死亡するという痛ましい事故がありました。

かつてちょろっとドクターヘリに乗っていた自分としては、速報の段階からこのニュースをこまめに追っていました。
今や自分は門外漢ですからこの話題に触れるのはやめておこうかと思っていたのですが、現役のフライトドクターやフライトナースは話題にしづらいかもと思い、あえて書くことにしました。

ニュースを見ていると「ドクターヘリが墜落」と報道しているメディアもありましたが、これは違います。
今回墜落したのは厳密にはドクターヘリではありません。
こちらに簡単に解説があります。

医療用ヘリ、ドクターヘリとどう違う? 軽症も搬送、離島などで活用

ドクターヘリは運営費と国と自治体がになっているのに対し、医療用ヘリは医療機関が負担しています。
ヘリの運営費ってバカになりません。
どこまで費用を入れるかにもよりますが、年間2億円近くはかかるのではないでしょうか。

ドクターヘリの安全性について調べていたら、少し古いですがこのような資料を見つけました。

「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」

研究協力者の中にお世話になった方の名前がありびっくりしましたが…。
さすが活躍されています。

これ見るとかな~り細かいですね。
チェックリストもすごくたくさんあります。

さて今回事故を起こしたヘリですが、この会社では昨年も墜落事故を起こしています。
この運行会社がどのようなところか分かりませんが、完全に民間での運営となると、安全性の部分でケチったりしていなかったか?というところが気になるところです。
ただでさえ費用がかかるのですから。
まさか安全性に関してケチるなんてことはしていないと思うし、ドクターヘリではないにしろ上記の基準に則った運営はされていたのだろうとは思います。

しかし今はただでさえ病院経営も大変ですし、しかも今回の医療用ヘリは2023年の取材の時は赤字だったことも分かっています。
厳しい予算の中でやるとなるとどこかでしわ寄せはくるのではないでしょうか。
善意だけではどうにもならないこともあります。

今回の事故において、緊急時に自動で発信される救難信号が海上保安庁や国交省に届いていなかったことが判明しています。
原因は分かりませんが、整備不良の疑いも出てきます。

そして今回3名の方が亡くなってしまいました。
自分も医師としてドクターヘリに乗ったときは、緊急時の脱出方法については簡単にレクチャーは受けました。
ただしそれだけです。

自衛隊のヘリなどには、事故などで遭難してしまった際のサバイバルグッズも載せていると聞きます。
海上保安庁のヘリでもそうかもしれません。
それだけ危険な任務も多いから、という理由もあるかもしれませんが、航空機事故はいつ起こるか分からず、それはドクターヘリでも同じです。
ドクターヘリに緊急時用の装備が十分搭載されているか?となると、そこは疑問です。

また自衛隊や海上保安庁のヘリの搭乗員は、常に「今日帰って来れないかもしれない」という気持ちを忘れないようです。
これも上記と同じで、危険で過酷な任務が多いからというのはあるでしょうが、事故の可能性から言えばドクターヘリでも同じです。

はたしてフライトドクターやフライトナースにそこまでの覚悟があるのか?
全員の気持ちを知っているわけでもありませんからなんとも言えませんが、自分の場合は「命の危険もあるよなぁ」とはうっすら思っていました。
しかしそこまで考えず軽い?気持ちでやっている人もいるかもしれません。
特にドラマの影響を受けて目指した人も中にはいるでしょう。
軽い気持ちでできるものでは決してありません。

そしてフライトドクターやフライトナースへの保障・手当についてです。
手当は1回あたり数千円レベルです。
命かけてこの手当はどうにかした方が良いかと思います。
自分の時も手当ついていたんだかついていないんだか気づきませんでした。

そして事故によるケガや死亡したときの保障についてです。
これは自分の時は詳しい説明は聞いたことがありませんでした。
(もちろん今はヘリ事業もしっかりと制度化されていますので、きっと事前の説明はあると思うのですが…。しかし手厚い保障があるのかどうかは分かりません。)
例えば医師や看護師に家族がいた場合、残された家族が困らず暮らしていけるような保障も必要になってきます。

手当については今でも数千円レベルかと思われます。
みな安い手当で、文字通り命かけて頑張っているのです。
すごいわ~、で済ませるのではなく、ここは早急に見直すべきだと思います。

リスクのためだけでなく、ヘリに乗るとかなり体力を消耗します。
気圧の変化によるものからか、乗っているだけで消耗します。
その分も含め、手当を考えるべきかと思います。

フライトドクター・ナースが理不尽で割に合わないリスクを背負うと言う形で成り立っているとも言えなくありません。
善意だとか志に頼るのではなく、現実的に評価するべきではないでしょうか。

また今回搬送されていた患者さんも亡くなってしましましたが、当然ストレッチャーにベルトで固定されていますから、このような緊急時には脱出は困難になります。
事故の時は一番リスクが高いでしょう。
そして気になったのが「付き添いの家族」です。
これまた自分の時は、なるべく付き添いの家族は乗せないようにしていたような記憶があります。
やはり事故の時の被害を最小限にするためだったのかと思います。

ただ今回は離島からの搬送であり、代替手段といっても船くらいしかありません。
ましてや緊急手術やら検査やら、今は事前の家族の同意書も必要になってきます。
患者さんだけ運ばれてきても、すぐに必要な検査・手術がなかなか始められない、という事態も想定されます。
救急医療だから何やっても大丈夫とも言えません。
今やなんでもかんでも訴えられる時代です。

今でも年間数名程度、造影剤によるアナフィラキシーショックで亡くなっています。
患者さん本人にアレルギーの有無を確認できればいいですが、意識がない場合は家族に確認するしかありません。
リスクについても家族に了承を得なければなりません。

今回の病院のヘリ運行が、常時家族の付き添いOKとしていたのかわかりませんが、家族の付き添い搭乗は最後の手段にするべきです

そして気になるるのが、「機体の老朽化」です。
自分がよく乗っていたヘリの機体番号は「JA112D」でした(しかも今回の事故と同型機です)。
なぜ覚えているのかというと、ヘリ当番の日は毎回無線チェックのために上記の機体番号を復唱し確認するので、それで記憶に染みついてしまいました。

で、ネットで「JA112D」と検索すると、現在の写真が出てくるマニアックなサイトがあるのですね。
今でも現役で活躍しているようです。
自分が乗っていたのは、もうかれこれ20年前ですよ?
まだ頑張っているのかぁと感慨深くなりました。

ヘリがどれくらいの耐用年数があるのか分かりませんし、もちろん定期的にしっかりしたメンテナンスはおこなっています。
交換できる部品は交換し続けていけば何十年も持ちそうですが、ボディーの部分は心配ないのでしょうか
金属疲労とか起きそうです。
ヘリなんて車よりもボディーや機械系統に相当なストレスがかかる乗り物ですしね。
かといって数年ごとに乗り換えるような代物ではないでしょうし。
しかし最新のものであれば安全装備も最新になっている可能性はあります。

今回の事故によって多くの問題提起がなされると思います。

搭乗員の安全性や保障についてしっかり議論したり、患者さんや家族への事故のリスク説明も搬送前に徹底しなければならないでしょう。

ただ単独事故で本人に意識がない、周りに家族もいない場合、どうやってヘリ搬送に同意をとるか、というケースも当然出てくるでしょう。
ヘリで搬送した方が救命率が高いと判断したのであれば、ヘリの事故の確率を考えればヘリで搬送するべきでしょう。
しかし万が一そんなときに事故を起こして亡くなってしまった場合、家族から訴えられる可能性も出てきます。
レアケースを考えたらきりがないのですが、このようなケース(本人意識無し、家族は周囲にいない)は案外あるものです。

医者の掲示板でも今回の事故は結構話題になっています。
しかし「ドクターヘリはやめた方がいい」なんて声も聞かれるのです。
「乱暴だなぁ」と思ってしまうのですが、やはりヘリによって搬送時間を大幅に短縮でき(特に山間部)、救命率の向上につながるケースは多くあります。

ましてや離島では、船では時間かかるし、天候によってはすぐに欠航になってしまいます。
ヘリの威力はスピードもあるしすさまじいものがあるでしょう。

こういうところにこそ民間に完全に頼るのではなく、国や自治体の援助を入れて欲しいとも思います。
しかしこれまた難しい議論で、究極的な話ですが数名しか住んでいないような島、さらに究極的には1人しか住んでいない島も、診療圏内に入るように公金を使ってヘリを配備するのか、ということになります。
何名以上ならOKとか、そこの線引きはできませんよね。

今回のように民間の病院の善意に頼るのではなく、離島の搬送に関しては消防庁や自衛隊のヘリなどに協力を依頼するということはできないのでしょうか。
容態の急変リスクがある場合には、そこに医師や看護師も搭乗してです。
公金を使うことには変わりありませんが、完全に民間に頼って負担を強いたり(最悪の場合安全性に問題が出てくることもある)、新たにドクターヘリを配備するよりは断然マシでしょう。
外国にお金をばらまいたり、政治家が自分の懐潤すことにいそしむんだったら、こういうところにお金を使うべきです。

以前老人ホームへの高額な紹介料の件についてブログを書きましたが、その紹介料の原資となるお金も元をたどれば社会保障費から出ている可能性が高いです。
高額な紹介料をもらって稼いでいる人たちは、今回のニュースを見て何も思わないのでしょうか。
そのお金は本来上記のようなまっとうなところに使われるべきものです。

ドクターヘリのパイロットは相当訓練を受けていますし、整備もかなりしっかりおこなわれています。
安全に向けた対策はこれでもかというくらいおこなわれています。
とはいえ事故はいつ起こるか分かりません。
誰も事故を起こそうとして起こしているのではないのです。

現役のフライトドクター、フライトナースは本当に深く考え悩むことになってしまったのではないでしょうか。

ドクターヘリの大きな事故はこれまでありませんでしたが、なあなあで事業を続けるのではなく、安全性であるとか搭乗員の訓練であるとか十分議論する時期なのかもしれません(かなり昔の話になりますが、少なくとも自分の時は十分議論されていたとは思えません)。
それが今回亡くなられた方々の死を無駄にしない方法のひとつでしょう。
「英雄だった」とかそんな賞賛は望んでいないと思います。

今回助かったフライトナースの方も深い心の傷を負ったことかと思います。
想像できないレベルだと思いますし、この先何年も何十年も、あるいは一生背負っていくことになるかもしれません。
事故が起きたあとの心のケアについても議論していくべきでしょう。

航空機事故の確率は相当低いものです。
でもいつ起こるか分からないものです。
ドクターヘリもメリットが大きいからこそ運営されているのです。
事故のリスクばかり考えたら何もできません。

車だって交通事故に合う可能性は相当高いですね。
交通事故のリスクをゼロにしたければ、歩いて往診に行くしかありません。
あるいは馬車か。ロバでもいいですけど。
でも馬もロバも、気が触れたら暴走するでしょう。
歩いて行ったって、上から看板落ちてくるとか、車に突っ込まれるとかリスクはあります。勝手に一人で転倒し大けがする可能性だってあります。
リスクのことを考えていたら何もできません。

リスクを最小限にすることをしっかり考え生きていくしかないのです。
というか、生きていること自体がすでにいろいろなリスクにさらされているとも言えます。

医者の中に「ドクターヘリはやめるべきだ」という意見があるのは非常に残念なことです。
深く考えていない人なんだろうと想像がつきます。

ドクターヘリの安全運行についてはほぼ徹底されていると思います。
たださらに万が一の事故の時の訓練を徹底してもらいたいと思いますし、リスクのある仕事をおこなっているフライトドクターやフライトナースをしっかりと評価してもらいたいと思います。命張っているのですから。